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5.2 太陽エネルギー利用

(1) 湿式太陽電池
太陽エネルギーをわれわれが利用可能なエネルギーに変換する仕組みの代表が太陽電池である。これまでの太陽電池の多くが半導体材料のみにより構成されていたのに対して、湿式太陽電池と呼ばれているもの新型の電池が注目されている。湿式太陽電池は、n型の半導体電極と対極との間に可逆的な酸化還元反応を行うレドックス試薬を含んだ電解質溶液を充填したものである(図5−5)。n型の半導体電極に光が照射されると、半導体内に正孔と電子が生じるが、半導体の伝導帯には表面から内部にかけて電位の勾配を生じるために、光により価電子帯から伝導帯に励起された電子はこの電位勾配に沿って流れ、外部の導線を通って対極に流れ込むのである。このような特性をもつ半導体を光半導体といい、二酸化チタンがその代表例である。二酸化チタンに光を照射すると水を分解するという現象は本多−藤島効果と呼ばれ、我が国が先導的に研究を進めてきた分野である。通常の酸化チタンは紫外光しか吸収しないので、太陽光利用の観点からはきわめて効率が悪い。ここで、生命(植物)が行なっているように、太陽光の中心をなす可視光を吸収するための色素分子の活用が考えられる。例えば、ルテニウムなどの色素を光半導体にコーティングさせることによって、太陽光の多くの部分を占める可視光の利用が可能となる。最近の研究では、現状で10%を超える変換効率を得ている。また、前章で示したように生命は極めて巧妙な手法で光の吸収波長に変化を持たせている。湿式太陽電池は、半導体を電解質に浸すだけで接合が形成できるので、大面積のものを安価に製作できる可能性を秘めている。さらに、この方法では次に述べる水素などの有用な化学物質の変換も同時に行うことができるというメリットもある。

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図5−5 湿式太陽電池

 

 

 

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